業界を知る 食品業界のサプライチェーン 川上から川下まで
近年、国内の胃袋(市場)規模が頭打ちで、市場全体としても閉塞感が漂う中、健康意識の高まりやニーズの多様化に対応する事が求められて、少品種大量生産から多品種の商品開発や、海外市場への展開などが各社にてすすめられている。そんな食品業界について、みていきたい。
食品業界の構造 1次産業から3次産業まで
私達がよく知る食品業界は、最終的な消費者として手に取る「商品」が最も身近なものであり、大多数を占めている。しかしながら、食品業界のサプライチェーン(原材料の生産、加工、販売までの物流の流れ)は長く、川上(商品の原材料)から川下(消費者が手にする場所)に至るまで多くの企業が関わっている。そのサプライチェーンには第1次産業と商社(食品卸)、食品メーカー、小売や飲食業なども含まれている。
第1次産業~生産者~
国内・海外含めて、様々な農産物、畜産物、水産物、小麦粉、魚介類、調味料などの原料を作るサプライヤー(供給業者)。食品メーカーで食品加工する場合と、商社・食品卸に直接商品を流す場合や、直販する場合などもありサプライチェーンの構築の仕方はそれぞれ異なります。
商社・食品卸
総合商社では、海外に自社グループの生産拠点を保有していたり、海外の事業者から買い付けて輸入して、サプライチェーンを構築しています。国内にける流通は食品卸に特化した専門商社が担っています。
食品メーカー
原材料を加工して、私たち消費者の手に届くような商品として、小売店や飲食店を通じて消費者に届けます。
このように食品業界と一括りにしても、多くの企業がそれぞれの役割を担っており、原料を生産する生産者(第1次産業)、生産者の製造した原料を流通させる商社や卸、食品メーカーの大きく3つに分類することができます。
食品業界の分類
上記の分類の中で、食品業界と言うと「食品メーカー」をイメージします。一口に食品メーカーと言っても、明治やロッテなどの菓子メーカー、即席麺の日清、レトルトのハウス食品、清涼飲料のサントリーやアサヒ、調味料の味の素、不二製油、食肉製品の伊藤ハム等など様々な商品に分類されます。
分類①:菓子メーカー
子どもの頃からお世話になる『嗜好品』を企画・製造する食品企業
有名な企業:明治HD、カルビー、ロッテ、UCC
分類②:即席麺メーカー
単身者にお馴染み。調理道具いらずの商品を企画・製造する食品企業
有名な企業:日清食品、東洋水産
分類③:乳製品メーカー
主として、牛乳を加工して作られる商品を企画・製造する食品企業
有名な企業:雪印メグミルク、森永乳業、ヤクルト
分類④:酒類・飲料メーカー
様々な飲料や清涼飲料水を企画・製造する食品企業
有名な企業:キリン、サントリー、アサヒ
分類⑤:調味料・加工食品メーカー
料理の味付けに使う材料を企画・製造する食品企業
有名な企業:味の素、ミツカン、キッコーマン
分類⑥:冷凍食品メーカー
食品を冷凍させて保存できるように加工した食品を企画・製造する食品企業
有名な企業:ニチレイ、日本水産
分類⑦:食肉・水産加工食品
肉や魚介類を原料として加工した食品を企画・製造する食品企業
有名な企業:日本ハム、伊藤ハム、マルハニチロ
海外への戦略的展開
国内市場の人口減少・少子高齢化を踏まえて、成長戦略としての海外進出も加速している状況です。和食は、「食の安全性」と「健康志向」という観点も踏まえて、「低価格、高品質」のジャパニーズブランドを海外市場に乗り込んでいます。例えば、中国を含む、アジア諸国は勿論、日本食ブームも追い風にして、欧州、中南米などにも進出することが期待されています。
健康志向に向けた国内戦略
一方、国内市場では、『健康』を志向する消費者をターゲットとした機能性表示食品の開発や、特定保健用食品(通称、トクホ)のジャンルをメインとして、多様な商品が開発されています。人生100年時代を考えて、資本となる身体の健康・安全性を意識する消費者が増えた事もあり、通常の商品より割高な高付加価値商品として提供する傾向が強くなっています。
EC市場を活用した流通改革
上述のサプライチェーンをみて分かるとおり、消費者の手に届くまで多くの企業が携わっています。企業も利益を稼得する事を目的とするため、サプライチェーンの中で、少しずつ各社の利益が上乗せされ、値段が上がる傾向にあります。そのため、生産者やメーカーが直接ECサイト等を用いて販売する戦略も展開されており、効率化が進められています。