コンビニエンスストア業界ビジネス ④飽和状態の国内市場動向
前回の記事では、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)のフランチャイズについて論じ、独自のフランチャイズ網を築く北海道の雄セイコーマトについて触れた。今回の記事では、フランチャイズ経営で稼ぐコンビニ大手3社のビジネスモデルについていくつかのKPIに基づき考察していく。
目次
- 国内市場は飽和状態
- 提供価値の変遷
国内市場は飽和状態
まず、あらゆるビジネス、産業、市場の規模を把握する為の出発点である損益計算書においてトップラインとなる売上高(≒収益)について、コンビニ大手3社の国内売上市場の推移を見てみたい。
過去5カ年の売上高推移を考察してみると、年ごとに若干の凹凸はあるものの、概ね売上高2兆円前後をキープしており、横ばいとなっていることが見てとれる。これまで、大手三社はFC加盟店を増やすために、M&Aによる合併などを駆使しながら店舗を増加し、売上高を拡大してきたが、既存店舗の撤退などもあり、全体での伸びはほぼ見られなかった。コンビニとして提供できる価値・機能が多角化して、日本型の独自のコンビニビジネスを展開する中でも、コンビニビジネスの市場全体が飽和状態にあると考えられる。
このように国内市場が頭打ちとなる中、今後の国内市場動向を探る前に、コンビニ事業が過去から現代に至るまでどのような価値を提供してきたのかについて見ていく。
提供価値の変遷
コンビニの事業は、最初の投稿で触れた通り、経済産業省にて「飲食料品を扱い、売り場面積30平方メートル以上250平方メートル未満、営業時間が1日で14時間以上のセルフサービス販売店」と定義されている。
この定義の下で、コンビニは顧客ニーズに応え、売上高を維持・増大するために時代の移り変わりにあわせて、提供する機能を変えてきた。大まかな流れは下記の通りだ。
1970年代には、今のコンビニ店舗の問題点として挙げられる24時間営業が1970年代に浸透し、年中無休のシステムが構築された。当時は、飲食品等を取り扱うスーパーマーケットや酒屋などを競合する業界として捉えていた。年中無休で店舗をオープンすることにより、利便性が圧倒的に向上したと言える。
1980年代以降になると、取り扱う商品の幅を広げ、何でも揃う店舗を目指して取り組みを拡大した。運送時の冷凍・冷蔵技術の向上もコンビニ機能の提供価値進化に貢献していたと言えるだろう。
1990年代に入ると、各社がこぞってお弁当を提供し始めた。安くてそこそこ美味しいお弁当の提供によって、家庭の台所機能を提供し始めたと言える。
2000年代では、コンビニ店舗内にATMが設置され、誰もが銀行窓口に行くこと無く、お金を貯金口座から引き落とすことが出来る様になった。
2020年代のコロナ時代は、各社がプライベートブランド商品を充実させると共に、店舗数の拡大路線から膨大な消費者データを活用するデータドリブンの事業への変革を進めている。
例えば、ローソンでは無印良品と提携し、衣服を始めとする生活雑貨の取り扱い商品のラインナップを拡充した。ファミマでは、FM限定Pumaマスクを販売したり、雨の日に売り上げが伸びるソックスからアイディアを受けた日頃から履き続けられるソックスなどの販売も開始している。
衣料系にもシフトし、従来のお弁当や生活雑貨等、他社と差別化ははかりにくかったコモディティ商品から、差別化を行う動きが強くなってきたと言える。また、各社が様々なコラボ提携企画を行なっており、既存製品の売上維持・拡大にも努めている。
冒頭においてコンビニとしての定義に触れたが、スーパーマーケットと比較して、店舗スペースが小さい為、商品数自体は少ないが、取り扱う品種数は非常に多岐に渡り、小売店として汎用性が高いのがコンビニの特徴と言える。
取り扱う商品の価格は、スーパーやドラッグストア等と比較して高めに設定されているように感じる事も多い。しかし、実のところ、メーカー希望小売価格ないし、数パーセント程度値引いた価格(オープン価格の場合適宜設定される)で販売される傾向である。昨今は、セブンのように賞味期限が近い商品について、5%のnanacoポイントを還元する形で実質的な値引きを行うケースや、ファミリーマートのボトルキープサービスと呼ばれる定期購入による割引商品の購入などのサービス提供が進められている。
このようにコンビニエンスストアは時代の流れ、消費者のニーズにあわせる形で提供する価値を進化させながら成長してきた。現代においては、より細分化されたニーズを的確に捉えるために、各社が「消費者データ」に目をつけ、様々な取り組みを見当し始めている。
次回は、各社が取り組んでいる「PB(プライベートブランド商品)」について考察を深めていく。次回の記事はこちらから
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