総合商社-三井物産中期経営計画2026①
2024年5月に7大総合商社各社が2024年3月期の決算を開示した。その中で、唯一2カ年連続当期純利益1兆円を堅持したのが三井物産である。今回は三井物産の利益及び、キャッシュ創出力について同社の中期経営計画説明資料に基づいて考察してみたい。
三井物産のキャピタル・アロケーション
現在の総合商社を語る上で欠かすことのできない要素が、稼ぎを示す『基礎営業キャッシュ・フロー』と、株主のリターンを示す『株主還元』、そして、どれだけの資金を次の事業に投資しているかを示す『投資』の3要素である。三井物産は、冒頭でも触れたように年間で凡そ1兆円の基礎営業キャッシュ・フローを獲得しており、本業から得られる稼ぎが非常に高い水準であることが読み取れる。
中期経営計画2023の実績においては、3年間累計で3兆円の稼ぎがあり、資産のリサイクル(=事業の売却による収入等)を含めると、3.8兆円のキャッシュ・インがある。このうち、約40%を次の投資に投下しながら、株主への還元(配当金の支払いや自己株式の取得)を1兆円の規模で実施しており、潤沢な資金について、適切な配分を実行していることが読み取れる。
さらに、2026中期経営計画においてポイントとなるのは、現在の中期経営計画では、成長投資を大幅に拡大する事にある。
投資家は、同社がさらなる成長投資により企業価値を増大させることが可能なのか、また、株主還元を拡大することによって、不採算の案件に投資するのではなく、資本効率を向上させることができるのかに注目している。
そんな中で、同社が重点分野として9つの事業分野を選定し、それぞれの分野に成長投資を実行する事が示されている。Industrial Business Solutions分野においては、同社が得意とするコア領域の投資である。
資源開発分野においては、既に確立されている同社の収益基盤に各国様々な優良資源を獲得する想定であり、24年3月期においてもすでに多くの投資が実行されている。また、機械・モビリティ分野においては、米国のトラックオークション事業への参画や、デジタルインフラ分野での米国サイバーセキュリティ事業への出資が行われている。