コンビニ業界のデジタルトランスフォーメーション
昨今、政府の後押しにより日本全国でキャッシュレス決済が推進されている。クレジットカードやQRコード決済、被接触型の楽天経済圏やPaypay経済圏、dポイント経済圏等の各社の取り組みが白熱する中、利便性を重視するコンビニでは、あらゆる決済方法への対応が求められている。また、コンビニ各社が顧客ロイヤリティを高めるために、ポイントカードやアプリ会員制度などを活用している。
目次
- キャッシュレス決済
- リアル店舗での広告事業展開
キャッシュレス決済 自前のファミペイ
最近コンビニに行くと、セルフレジが常設されている。スマホ一つ持って買い物に行き、定員とのやり取りも無く、商品の購入・決済を完了することができる。ファミリーマートは従来からファミリーマートTカードというファミリーマートでの利用がお得なクレジットカードサービスを提供してきた(ファミリーマートが出資するポケットカード社がクレジットカードを発行)。
昨今のQRコード決済サービスの拡大に伴いファミリーマートとしても、独自に「ファミペイ」というアプリ&決済サービスを手掛け、提供している。ファミリーマートでは、これをDX=デジタルトランスフォーメーション施策の一つとして手掛けている。
これまでのコンビニ現場での課題の一つとして、では買い物をするために事前に行う電子マネーのチャージや、無数の分野に拡大した料金収納代行サービスなどが影響して、結局は店舗内の現金が増加傾向にあるという問題点も抱え込み、特に料金収納代行では、時に客が数十万円からそれ以上の大きな金額の支払いを持ち込むことがあり、大量の払込用紙と高額の現金を前に店員やオーナーが長時間のレジ対応に追われるなどといったことも珍しくなくなっている。
そんなファミリーマートがDXの中核に据える重要なツールの一つが、楽天ペイやPayPay等同様のQRコード決済の「ファミペイ」である。セブン-イレブンはPayPayと、ローソンはauPayと『連携』した上で、キャッシュレスを目指す一方で、単なる決済手段の提供に限らず、顧客情報の収集や、広告配信、適切なマーケティング展開のツールまで昇華する事を目指している。
ファミリーマートは、独自の決済サービス基盤を自社で構築し、その基盤で得られた生の顧客のビッグデータを活用し、広告マーケティングに展開している。
リアル店舗での広告事業展開
ファミペイによるデジタルトランスフォーメンションを皮切りに、ファミリーマートは、『モノを売る』という従来の小売店舗から、『情報を提供する』という拠点への店舗の次世代化を進めている。ファミリーマートの親会社である伊藤忠商事と共に広告を配信する「ゲート・ワン」という会社を設立した。
ファミリーマートは店舗の次世代化として、「店舗のメディア化」をめざし、来店客にとって有益な情報となるように店舗のデジタルサイネージ(電子看板)に広告などのコンテンツを配信するメディア事業を展開し始めた。2022年の春までには、同社の店舗数の2割程度にあたり3,000店舗まで対象店舗を拡大する事を想定している。
これまでに述べてきたように、コンビニの『売上』の成長にはストップがかかっている。これは、人口の減少に加えて、24時間営業問題や廃棄問題などがあり、どのように売上成長を目指すかということが課題になっている。
そのような状況下において、ファミリーマートが参考にしたのは、米国で小売事業を展開しているウォルマートである。ウォルマートは、米国のアマゾンがホールフーズを買収したことにより、厳しい状況に置かれている小売店であるが、広告プラットフォーム事業に力を入れている。店舗内の壁は勿論だが、顧客の注目を集めやすい場所に設置し、メーカーの広告を表示する取り組みを行っている。
実店舗において、顧客のターゲット層を絞った上で、その顧客層にあった広告を表示することは可能なのだろうか。その問いに答えるには、ビッグデータの活用に触れる必要がある。過去の記事でも記載したとおり、コンビニエンスストアは、顧客の販売データを大量に保有している。その販売データに基づいて、顧客の購買意欲を刺激する広告を配信する事は、大変相性の良い構図であると言える。
特にファミペイにより、従来のPOSシステムのように店員がターゲット層の年齢や性別などを主観で判断する事とは異なり、本人が登録したリアルデータに基づいた顧客情報を自社で取り込む事が可能となる。その結果、より精度が高くなり、ダイレクトマーケティングに貢献する事が可能となる。実に小売とデータを結びつけることにメリットがあるのか、ということをファミリーマートは理解していると言えるだろう。
しかし、ファミリーマートのみならず、セブンイレブン、ローソンも自前のアプリを構えることにより消費者データの囲い込みを進めている。