リアル店舗に進出するAmazon、Amazon Goの脅威
前回の記事(コンビニ業界に未来はあるのか。王者セブンがネットコンビニ始動はこちらをクリック)でも述べた通り、無人コンビニの台頭や、コンビニ大手各社のネットコンビニ参入、旧来型のコンビニという店舗に求められる機能が変化しつつある。そのきっかけを作ったとも言える存在ががAmazon Go”だ。この記事では、GAFAの一角であるAmazonの動向や国内大手各社の経営戦略から今後のコンビニの在り方を考えてみたい。
目次
- What is ” Amazon Go ” ?
- 基本的な仕組み
- メリット V.S. デメリット
- 総論
- 最後に
1. What is “Amazon Go” and how does it work?
2016年12月、世界中に衝撃が走った。EC界のトップに君臨する米・Amazonが新たな試みとして、本社内に完全無人のデジタル店舗「Amazon Go」を出店したのだ。Amazonによるコンビニ業界、生鮮食品流通業界への殴り込みは世界に衝撃を与えた。
Amazon Goのスローガンは“No Lines. No Checkout. (No, Seriously)”らしい。
2. 基本的な仕組み
店舗の至るところにカメラとマイクが設置されており、客の顔・手の動きやどの商品をカゴに入れたのかをAIが認識し、また商品棚に設置された無数の重量、圧力、赤外線センサーが商品の移動をトラッキングして、専用アプリと自動連携させることでお会計をせず、店を出ると同時にAmazonアカウントで決済が完了される。
3. メリット V.S. デメリット
メリット
1.滞在時間の短縮、レジ前の行列緩和
- レジレス(”Just Walk out”)によって商品を一点ずつ読み取る手間が省ける
2.人件費削減
- レジが無いため、レジ打ちの店員を配置する必要がない。
- とは言っても、実は店内には結構店員さんが働いている。
3.行動データ収集
- 店舗の構想段階から配置されているデータサイエンティストたちがフレッシュな購買データを分析することで、需給予測の精度だけでなく顧客体験も日々改善されていく。
- 無数のカメラとマイクで個人情報の特定が可能。見られているというプレッシャーで万引きやイタズラの防止効果が期待される。
4.ストレスフリー(?)
- 店内での混雑の緩和
- 接客へのクレームが大幅に減少するため、客・店側双方のストレスが軽減
デメリット
1. Amazonアカウントの作成が必須
- 入店時にAmazon Goアプリの読み取りが必要なため、ダウンロードが必要。
- 退店時はAmazonアカウント上で自動的に決済されるため、Amazonアカウントへの事前登録が必須。
2. 利用方法に慣れが必要
- 入店時にスマホでアプリを起動し、QRコードをかざすことが手間に感じる人も。
- 初めて利用する人は店内で決済をせず、店を出ることに罪悪感を抱く人も(笑)
3. セキュリティーの課題
- 一般的にコンビニにおける万引き損耗率は1.5%程度と言われている中で、同店舗での万引きはゼロなのか?(米国のYouTuberが万引きに成功したという動画が話題になりました)
- 画像データの誤認による過請求は起こりえないか?
- 基幹システムがダウンした際のセーフティーネットは?
4. 総論
つまり、Amazon Goを一言で表すと「工数の掛かるレジ打ちという作業を省き、その分のマンパワーを他のサービスに振り分けている」、業務効率化をとことん突き詰めた新形態のコンビニサービスなのだ。
今日では、野菜等の生鮮食品も取り扱う”Amazon Go Grocery”や食料品加えて調理器具や書籍、タブレット端末までも取りそろえる”Amazon Fresh(一部、有人レジもあり)”も展開している。
これらの取り組みは、Amazon.comでのオンラインショッピングと実店舗をシームレスにつなぐOMO戦略(Online Merge Offline)が取られている。つまり、実店舗をタッチポイントにして、膨大な顧客データを基にオンラインであろうがオフライン店舗であろうが、最高のパーソナライズ体験を提供することに特化しているのだ。
5. 最後に
私たちがコンビニに求めるもの、それはその名の通り「便利さの追求」なのです。その点では、Amazon Goはまだまだ日本人が求めるサービスレベルには到底及びません。なぜなら24時間時間営業されていなければ、陳列されている商品数も通常のコンビニと比べれば極めて少なく、世界全体を見ても店舗数も圧倒的に足りません。
Amazonが見つめる先にあるものは、単純にWhole Foodsとのシナジーの創出、或いは実店舗での実証研究を経て更にグレードアップした画像認識システムや決済機能自体の販売なのか、はてまた消費者の消費行動データの販売なのか、真の目的は私には分かりません。だからこそ、今後もAmazonから目が離せません。