コンビニエンスストア業界ビジネス⑧~物流改革~
コンビニエンスストアという名前が意味しているとおり、CVSを利用する人の多くは、コンビニに行けば何でも手に入るという所に魅力を感じている。筆者もついつい、アプリで配信される無料の商品引き換えクーポンを使うために、コンビニに寄ってしまっては、「ついで買い」をしてしまう。その「利便性」を実現する秘密は「コンビニ物流システム」に隠されている。今回は、コンビニ業界の物流の仕組みについて触れていきたい。
目次
- 物流手段
- 最適化
- 近年の取り組み
- 物流手段
CVSの物流システムは、端的に言えば、「過去・現在の膨大なデータを活用して、商品生産・在庫数量を推定し、効率的に店舗に配送する」ものである。ここで言う膨大なデータとは、CVS加盟店からの発注・販売データや在庫情報を指しており、これらの情報をメーカーと共有した上で、需要のピークにあわせて商品を計画的に生産する体制を構築している。
配送に関して言えば、商品ごとの味や品質を維持するため、最適な温度帯に分けて共同配送センターに納品し、各店舗に一括で配送。例えば、消費・賞味期限をそれほどシビアに考える必要の無い日用品やお菓子などの商品と、弁当・おにぎりと言った賞味期限が短命の商品群では異なった運用での配送が行われている。
ここで、CVSの物流におけるゴールを明確化すれば、「配送コストを極限まで低減すると同時に、配送クオリティーの最大化を実現する」ことにある。
CVSは全国津々浦々に店舗展開されており、取り扱う商品も均一である。そのため、利益増加を目的とするCVSグループにとっては、いかに「配送コストを削減できるか」が、重要な経営指標となる。通常、CVSの配送は、常温、低温、冷凍に分類されると共に、定期便として一日2~3回配送されるトラックと、追加で運ばれるトラックに分けられる。定期便は、決まったルートのみを通る事で、部分最適化された物流手段である一方で、追加配送は各店舗の発注状況を踏まえて個別対応が必要となるため、通常よりも割高になる。
また、配送ルートの最適化に加えて、生産量、在庫量の最適化も密に関係していると言える。
2. 最適化
個別店舗の観点から見てみると、コンビニでのアルバイト経験があると判るが、店舗スペースを必要最小限とするために顧客からは見ることが出来ないスペース(通称、バックヤード)は殆ど無い。そのため、商品需要を的確に捉えた上で、発注を行い、食品ロス等が発生しないように商品を仕入、消費者に供給する必要がある。
もし各CVSが等間隔で配置されていて、スムーズな搬入が実現可能な場合には、最適な配送ルートの構築は難しくない。しかし、現実はそう簡単にはいかない。店舗の立地は全体最適を考慮した立地とは程遠く、人的な都合で搬入が前後することも考えられるため、最適な配送ルートを導き出すことに各社が頭を悩ませている。
3. 近年の取り組み
セブン、ローソン、ファミリーマートのCVS大手の3社は、経済産業省支援のもと、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマート物流サービス」プロジェクトに協力し、チェーン横断的な共同配送物流の実証実験を2020年8月に実施した。
イメージ図にあるとおり、隣接するCVS、同一エリア内の店舗を対象としたCVS配送の物流網を共同化することにより、全体のコストを低減する事を企図している。
この実証実験は、「CVS大手3社が物流の共同化することで配送効率の改善に効果があるのか」という問いに答えるものだ。また、この取り組みを通じて得られた知見から、新たな物流連携の拡大・効率化の検討を行うとともに、SDGsの観点からもフードマイレージの削減、運行トラック数の減少による二酸化炭素排出量の削減に取り組むものでもある。
実験では、都内湾岸エリアの3社の近接した店舗(ローソン 14店舗、セブン13店舗、ファミリーマート13店舗の合計40店舗)に対し、同じトラックで商品の納入を実施し、共同配送による物流効率化の効果を検証した。そもそも同一エリア内でこれだけのCVS店舗が密集していることが、生き残りを掛けた潰し合いの構図となっている今日の国内CVS業界の課題を示しており、共存のみが生き残る道と言うことを証明しているのではないだろうか。
また、取り扱う商品、特に、常温品の様にどのCVSも取り扱う商品の共同在庫の可能性も検討するため、一部の商品は共同物流センターで在庫し、店舗別にピッキング等も実施している。