コンビニ業界ビジネス⑦~発注・仕入~
小売店の中でも、コンビニエンスストアは消費者にとっても最も身近な小売店舗であると言える。生活圏内において約2-3店舗が隣接しており、各社の取り扱う商品は概ね類似する傾向がある。フランチャイズ店に加盟するコンビニ店舗にとっては、商品を発注し、仕入、在庫し、販売する事で収益を稼得する事ができるが、その発注・仕入ルートはどのようになっているのだろか。今回は、コンビニビジネスの基本となる発注・仕入についてフォーカスして見ていきたい。
目次
- 購買ルート
- 需要予測
- 近年の取り組み
購買ルート
チェーンによって対応は多少異なるが、基本的な商品の仕入方法については、本部の指定業者からの指定商品を買い取るというルートのみに限定される。購入時点の仕入代金の決済は本部が代行する。そのため、各店舗がオリジナリティのある商品を独自に調達し、店頭で販売することは原則認められておらず、他店舗(含む、同ブランド)との差別化が殆ど出来ないというジレンマを抱えているのが現状である。なお、店舗ごとに独自で仕入・販売が認められる場合には、所定の手続と本部の事前承認が必要となっており、極めて限定的なものになっている。
そんな中で、昨今のCVS各社の取り組みとして、地場の野菜などを取り扱うなどの試みも行われている。大手のコンビニチェーンは、高い購買力を持っているため、サプライヤーに対しても強い競争力を持っていると考えられる。各コンビニ店舗の売り場キャパシティが限られている事もあり、どの商品を選択するのかのインセンティブがコンビニ側が持つという点で強みがあると言える。
2. 需要予測
情報システム面ではPOSシステムを利用し、季節・天候・地域性・性別・年齢層・流行などからなる売れ行き情報などを管理・分析する事で売れ行き商品を的確に把握し、限られた店舗内で最大売上を挙げられるよう仕入の効率化を追求している。特に500ml入りペットボトル飲料に関しては、毎日のように新製品がリリースされるが、それらを限られた店舗内にすべて取り揃えることは不可能であり、POSデータを活用して、長くても1か月以内に売れ筋か廃れる商品かが判定され、商品の入れ替え判断が行われている。結果的に市場で生き残る清涼飲料水は全体の0.1%程度しかない。CVS店舗で商品棚を見る度に新商品が乱立していたり、既存商品でもパッケージがリニューアルされているなど消費者にとって目につきやすい。
CVSの各店舗にはフランチャイザーから担当社員が定期的に巡回しており、また、POSシステムの情報機能なども活用して需要予測などの情報提供や仕入の指導を行うが、どの商品を・どれだけ・いつ仕入れるかなど、仕入の判断は各店舗のオーナーの権限と責任とされている。実際現場では、士気の向上を理由にアルバイト従業員に仕入れの判断をさせていることも多い。その判断が正しければ店舗の売上増となるが、需要を読み違えれば品切れとなり売上が伸びなくなったり、あるいは仕入量が多過ぎて商品が期限切れとなると、廃棄ロスを店舗オーナーが被ることになる(詳しく内容はこちら)。
3. 近年の取り組み
昨今、各社ではビッグデータを活用する取り組みが進められている。例えば、ファミリーマートにおいては、親会社である伊藤忠商事による支援を通じて、人工知能(AI)を活用したバーチャルヒューマンエージェントの起用を進めている。これは、従来マニュアル作業となっていたファミリーマートに店長業務を支援するシステムであり、ビッグデータから発注量の増減などを提供してくれる。通常であれば、店舗の経営指導を行うスーパーバイザー(SV)が店舗運営効率化のために指導を行うが、そうした業務をAIが行うことで、FC本部による業務低減効果からコスト削減が見込める。
●仕入れチャネルの解禁
また、前述したが、仕入チャネルの一部制限の解禁も行われているようだ。例えば、セブンイレブンでは地元農家支援の取り組みも兼ねて、地元で採れた規格外の農作物を仕入れ、地元店舗で販売し、フードロス削減、SDGsに繋がる取り組みが行われている。
https://www.47news.jp/5174704.html
●販売チャネルの多様化ー固定費の削減
別の取り組みだが、セブンの試みとして、地域密着型をコンセプトとした、『セブンあんしんお届け便』と呼ばれる配送手段がある。これは、軽トラックで移動販売するCVSであり、物流自体を機会と捉えて、一定のルートを回遊するCVSが商品を販売するものである。また、セブン自販機と呼ばれる自動販売機によるサービスも行っている。