コンビニエンスストア業界ビジネス⑥ 海外市場を巡る動向
目次
- 国内市場の限界
- 市場分析
- 地域別コンビニ事情
国内市場の限界
首都圏のCVS数は飽和状態だとささやかれ始めて、はや10年になる。2019年、統計を取り始めて以来(2005年~)初めて全国の総店舗数が減少に転じた。また、各社の既存店の客数は伸びていない実態もその裏付けとなるだろう。CVSが取り扱う商品は食料品、日用品が中心となるため、他事業とも激しく競合しており、他小売事業であるドラッグストアやスーパー、EC(Amazon、楽天等)、或いは外食産業、決済手段等の金融事業とも比較していく必要性がある。
ここでは、大手三社が取り組んでいる海外市場の拡大について見ていきたい。
市場分析
アジアの小売市場は2021年まで年平均で+6.3%成長し、その市場規模は、ヨーロッパと北アメリカ各国を合算した規模に相当する4兆8,000億USD(約527兆円)に達している。その中でもCVS事業で2017年から4年間の年平均成長率が最も高いのはベトナムの+37.4%、フィリピンの+24.2%、インドネシアの+15.8%が続くと予想される(IGDリサーチ)。これら3か国は国内総生産(GDP)の急速な伸びに加え、外国投資を奨励する方向に法規を改正、国民の消費習慣にも変化をきたし、都市化の急速な進行、若年人口の増加、可処分所得の増加などの要因でCVS市場が伸びている。
世界中を見ても、日本のCVSは品揃え・品質・コスパが群を抜いている。日本のコンビニ店舗の様子をYouTubeに投稿すれば、それだけでバズることもある。一方で、日本のコンビニ企業が海外に進出する際、店舗特性をローカライズし過ぎて、日本のCVSの魅力が失われているという声もある。
では、地域別に世界のコンビニ動向についてみていきたい。
地域別コンビニ事情
世界の中でもCVSが充実していると言われるのは、台湾だ。日本を意識した商品ラインナップでおにぎりやおでんを筆頭に、サンドイッチ、ロールケーキ等のパン類、菓子類、アルコール類も豊富に置かれている。特に台北では、日本以上のコンビニ密度とも言われている。アジアの他の地域を見てみると、中国、韓国、東南アジアではCVSが市民権を得ており、市場規模を拡大している。
インド
インドの小売市場の約9割は、伝統的な零細店舗だと言われている。近年では、こうした伝統的な小売店を近代化させようと取り組むのが、地場大手カフェチェーンとタッグを組んだ日系CVSのエッセンシャルズがある。その運営会社は、セブン・ジャパン出身のメンバーが中心となってできたコンサルティング会社である。
北米
CVSの発祥であるアメリカの店舗は日本との類似点も多いが、近所に買い物に行くためにも自動車を利用する事が通常であるアメリカでは、多くの場合、ガソリンスタンドのような他施設と併設されている事が多い。最近のセブンイレブンの取り組みを例に挙げると、フレッシュフードを軸にした「食」を目的に来店される顧客ニーズに沿った取り組みが行われていたり、アルコールの提供を含むカウンター飲料の提供や、レストラン併設型の店舗などが次世代型店舗としてオープンされており、さらなる付加価値のあるサービス提供が可能なCVS事業に向けた取り組みが行われている。
南米には、基本的にCVSは無い。代わりに、ガソリンスタンドの敷地内に併設された店がCVSのような作りになっていたり、個人商店がCVSのような役割を担っている。
オーストラリアでもセブンが有名。価格が高く、日常的にはスーパーを使う人が多い。尚、アルコールが販売されていない。営業時間は、地域差が大きく、都会では24時間営業もあるが、田舎の方に行くと夕方まで。
ヨーロッパでは、日本型CVSがある国は少ない。その理由は、24時間営業が禁止されている国や、日曜日の営業規定が厳しい国など、営業の時間規定が厳しいからである。宗教上や文化的背景、労働者保護の理由から、土日祝祭日・夜間・早朝営業の小売店自体が少なく、日本でいう所謂CVSという業態自体が成立しにくい。
特にドイツでは、法規制の関係で小売店の長時間営業が不可能なので、早朝や深夜あるいは日曜祝日に営業するのは、ガソリンスタンド併設店などの一部に限られている。
例外的に、セブンイレブンがノルウェー・スウェーデン・デンマークに少数ながら出店している。
アフリカにも、基本的に日本のようなCVSは無く、キオスクと呼ばれる個人商店を利用することが多い。キオスクは日本のコンビニの縮小版のようなもので、町や村に必ず存在している小売店である。日本人が携わるビジネスとして、キオスクと無料の血圧測定サービスを組み合わせたサービスが行われており、タブレット端末を用いた販売管理、在庫管理を行いながら、物流をコントロールし、CVSチェーン展開を手掛けているコンビニチェーンも存在する。従来からのローカルビジネスに、ITを組み合わせ、データ利活用に結びつけることで既存のビジネス領域に付加価値を付ける形でアフリカでのコンビニビジネスが行われている。