コンビニエンスストア業界ビジネス ⑤飽和状態の国内市場動向
前回の記事では、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)の提供する価値の歴史について触れた。今回は、コンビニがメーカーに提供する機能と、コンビニ独自商品であるプライベードブランド商品について考察していきたい。
目次
- メーカに提供する機能
- プライベードブランド商品
メーカーに提供する機能
コンビニはFC店舗を多数構えており、小売ビジネスを営んでいる。そのため、消費者(顧客)との接点を持っており、膨大な量のデータを保有している。性別、年齢、属性、地域、時間帯等様々なデータに基づいて、サプライヤーに対する新商品の提案なども行っており、これらの市場調査は各店舗の販売データを基に本部主導によって行われている。昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進においては、コンビニで得られる顧客データを活かす取り組みもあるようだが、POSシステムの導入がコンビニとしての最初のDX推進と言えるだろう。
メーカーとしては、自社製品の市場調査の場としてのコンビニを、マス層に対する接点ととらえる事となるため、コンビニ側がデータを用いて提案する製品企画を積極的に受け入れ、自社製品を売り込み、コンビニの店頭に置いてもらうというマーケティングが進められている。コンビニ側も、売れ筋商品は何か、定番商品は何か、又、新規商品として売れそうな商品は何かと言った事を踏まえて、メーカーに対して商品企画の提案をすることも可能である。
プライベードブランド商品
メーカーとは別に、コンビニ本部自体も独自の商品であるプライベートブランド(PB)を企画・販売している。PBの商品パッケージに記載されている製造元を見ると、メーカーの企業名が記載されている事がよくあるが、これは、損益分岐点比率に関する考え方を踏まえた、メーカーとコンビニの両社にとってメリットのある取引として設計されているものである。詳しくは別の機会に触れるが、メーカーの製造ラインの稼働率は必ずしも100%では無いことが多く、在庫になる前提で商品を作らない傾向にある。その操業度の余力を用いて、ほぼ同水準のプライベードブランド商品をコンビニ名義で製造する事でメーカーは固定費を回収する事が可能となる。
実際に販売する際には、PB商品の価格を同種製品よりも若干安価に設定し、価格競争力でメーカー商品と差別化する販売戦略が主流と言える。PBとメーカーブランド品の品質に差異はないのだが(※商品にもよるものの)、「ブランド価値」という観点でメーカー商品を選択する人が多いのではないだろうか。
また、昨今のコンビニでは、あらゆる季節に企画商品を販売する店員の姿が脳裏に浮かぶだろう。具体的には、正月のおせちやクリスマスのケーキ、土用の丑の日のウナギなどがあげられ、様々な会社とタイアップした商品を開発し、提供している。
なお、鬼滅の刃ブームで様々なメーカーがタイアップし、コンビニ業界ではローソンがタイアップした際の売上への貢献は大きなものであったことは記憶に新しい。
国内市場の売上高頭打ちとなる一方で、商品の開発に注力し、顧客を飽きさせないように「質」を追求し、業績を拡大する方針を各社が打ち出し、商品企画・販売を行っている。
例えば、ローソンの様に生鮮食品をメインとして取り扱う店舗を「ナチュラルローソン」として、ローソンとは別の看板を掲げることで独自カラーを出し、店舗自体を差別化し、売上高増加のための戦略を実施している。また、店内キッチンで調理して提供する「まちかど厨房」は、全国約6,000店舗(2020年 8月末時点)に併設。店内で炊き上げた白米、揚げた厚切りロースカツなど、 店内調理だからできるひと手間かけたおいしさを提供することで他社との差別化を図る。
セブンでは、「ターゲットを誰にするのか」ということを商品レベルに落とし込む形で商品価値を高めようとしている。具体的には、セブンプレミアムシリーズの様に、働く女性の増加や単身世帯の増加を背景として、中食需要拡大ニーズに沿う食卓むけ商品の提供を進めている。
ファミリーマートも、セブン同様に「お母さん食堂」で中食需要を捉えようとしており、どのコンビニも生活様式の変化に合わせた商品企画をしていることが見てとれる。
プライベートブランド商品は、コンビニの独自性を表現するためにも重要な存在である。例えば、スイーツやお菓子のようなジャンルでは、コンビニ独自の商品ラインナップが豊富であり、季節感や新しいトレンドを取り入れた商品を数多く展開している。このような商品展開は、メーカーとしては難しい場合もあり、コンビニ側が開発した商品であれば、その商品が売れ行き好調であれば、他社と比べて優位に立つことができる。
まとめ
コンビニは、店舗を多数構えているため、膨大な量のデータを保有している。このデータを基に、メーカーに対する新商品の提案を行うことができる。また、コンビニ自身もプライベートブランド商品を企画・販売しており、価格競争力でメーカー商品と差別化する販売戦略が主流である。これらの取り組みによって、コンビニは独自性を確立し、市場において強い存在感を示している。
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