コンビニエンスストア

コンビニエンスストア業界のビジネス① 小売業界での立ち位置と歴史


 国55,000店舗超をほこり、年間120億人超の顧客が訪れる巨大市場であるコンビニエンスストア業界。人口減少&高齢化が進む日本において、出店店舗数が年々減少し、業界再編が進んでいる。大手CVSと呼ばれる企業と聞かれると、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンが思い浮かぶだろう。過去空の統廃合によって、再編が進んだ結果、この上位3社に概ね集約する形になったコンビニ業界。さらに、大手総合商社の一角である伊藤忠商事(株)がファミリーマートのTOB(Take Over Bit:株式公開買付)を実行したことは記憶に新しい(2021年4月現在)。国内市場の成長が頭打ちとなっていく中、各社がどのような経営戦略の下で事業を展開していき、企業の価値を向上していくのかをコンビニのビジネスモデルを紐解きながら、見ていく。

目次

  1. そもそも「コンビニエンスストア(CVS)」とは
  2. コンビニの歴史
  3. コンビニの鍵となる「フランチャイズビジネス」とは

1.そもそも「コンビニエンスストア(CVS)」とは

 私たちの生活圏には、至るところにコンビニエンスストア(以下、コンビニ)が乱立している。そもそもコンビニはどのようなお店のことを指すのだろうか。経済産業省の定義によれば、「飲食料品を扱い、売り場面積30平方メートル以上250平方メートル未満、営業時間が1日で14時間以上のセルフサービス販売店」と定められている。そのため、消費者目線で見た際には、あまり違いを感じないことも多いかもしれないが、コンビニ店舗によっては広さが異なっており、店舗に並べられている商品量に多少の差が存在しているが、『営業時間』という観点で他の小売店とは一線を画すビジネスを行う事業形態であると言える。

2.コンビニの歴史

 本題であるコンビニのビジネスモデルに入る前に、コンビニの発祥について考えてみたい。コンビニは1920年代にアメリカで誕生したと言われ、元々は氷を専門に販売していた小売店が日用雑貨や食料品などの品を揃え、営業するようになったことが起源と言われている。朝7時から夜11時まで営業していることから「7-11(セブン-イレブン)」と言われるようになったというのは、よく知られた話だろう。「セブン-イレブン」の間で「-」の文字があるのは、この起源があるからだと言えるだろう。
 これは、氷のみを販売していた小売店がお客の利便性を高めるために、彼らのニーズを汲み取り、より多くの日用雑貨を取り扱い始めた事で、事業として進化した結果と言えるだろう。昨今のコンビニでも顧客の利便性を向上するために、あらゆるサービスを検討・実施していると言える。

 日本で初めてコンビニが開店したのは1969年と言われている。それから50年余りが経過し、今では小売業界売上TOP10の中にコンビニ業界最大手セブン&アイHDがランクインしている(2019-2020年)。このように生活インフラとして完全に定着しているコンビニが、どのように業績を拡大してきたのか、そして今後はどのような展望が予想されるのかを簡単に考察していく。

2020年小売業界売上高ランキング
*イオンについては後述

 参考までに世界における小売業界の売上高ランキング(2019年)を集計したところ、以下の通りだった。10位以内の多くは米国企業であり、日本企業は含まれておらず、国内1位のイオンは14位という実績だった。

2019年小売業界世界売上高ランキング

 では、なぜ取り扱う単価が百貨店やスーパー、或いは専門店(家電量販店や衣料品)と比較して安価なコンビニ事業がランキングで上位に位置する事が可能なのだろうか。それは、コンビニのビジネスモデルが「フランチャイズ経営」によって拡大してきたことに起因するだろう。

3.フランチャイズビジネス

 フランチャイズの基本理解のためには、以下のページを参照頂きたい。
 ここでは日本のコンビニ業界で採用されるフランチャイズ・システム(以下、FC)について論じる。

 コンビニ業界に属する企業の多くが採用するFCを考える際に欠かすことの出来ない登場人物は、ノウハウや商標を持つ「フランチャイザー」と、それらのノウハウを一定のロイヤリティ(使用料)を支払う事で利用する「フランチャイジー」である。FCとは、ビジネスモデルをパッケージ化することで、第三者が比較的容易にビジネスを模倣し、経営する事が可能な事業形態において、よく使用される方式である。
 フランチャイザーはすでに確立された小売事業のビジネスモデルの「商標」、「システム」、「経営ノウハウ」、「ブランド」や「経営指導」などを利用し、商売を行いたいと考えるもう一人の登場人物であるフランチャイジー(加盟店)に対してこれらをパッケージとして提供する。

 具体的には、同じセブン-イレブンの看板であっても各店舗を異なる法人(主に中小企業)及び個人事業主が運営している構図となっている。FC店オーナーは、前述の権利をフランチャイザーから得る代わりに、オーナー自らの事業経営によって稼得した利益の一部を「ロイヤリティ」としてフランチャイザーに返上する。コンビニのFC展開は有名だが、「暖簾分け」という言葉で表現される飲食業界なども、同様のFC経営を行っている典型的なビジネスモデルといえる。

 この様なビジネスモデルにおいては、フランチャイザーである本部は、自身の資本参画による直接出資を必要とせず、多数の店舗を構える事が可能であり、労せず稼ぐ事が出来るというビジネス構造と言える。市場が拡大傾向であれば、市場規模、利益を急成長させる事が可能と言える。

サマリー
・コンビニとは、飲食料品を取り扱う一日14時間以上営業している小売店
・発祥はアメリカの氷販売の事業者で、今のセブンイレブンの前身
・日本の小売ランキングではセブンイレブンの親会社セブン&アイが2位
・フランチャイズ・チェーンの展開によって規模を拡大し、成長

 次回は、各社のフランチャイズ経営の戦略について考察していきたい。
 次回の記事はこちらから

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